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時空間認知の歪み

インターネットの世界での場所の認知は、アドレス末尾に付け られる符号によってなされる。「jp」で終われば日本だし、 「edu やcom」ならばアメリカ、「ca」ならばカナダという具 合だ。これはメールのアドレスでもwww のURL でも共通である。 しかし、じつのところ、インターネットの世界と接触している と、「(英語とか日本語とかの)言葉の違い」以外には国ある いは文化を区別するなんらの印象も持てない。だから、インター ネットに適応すると、そのような「空間の拡がり」を感じる能 力が減衰することが予想される。

もちろん、空間認知の歪みは今に始まったことではない。 先の旅行でも感じたことだが、私にとっては自宅と羽田空港は、 羽田と福岡と同じ程度の「距離」しかなく、「福岡に行ったつ いでに山口と広島に寄ってくる」という言葉が如何にも無意味 gifに聞こえるほ ど、「羽田−福岡」間は近いのだ。しかし、インターネットの 影響はそれをはるかに上回る。なにしろ、www の場合、ある場 所から別の場所へと移るのは一瞬のことで、しかも多くの場合 URL を入力することもないのでかろうじて付された末尾の国符 号さえ意識されることは少ない。一般的に我々が空間距離を認 知する場合、なんらかの移動時間で推し量ることが多いわけで あるが、インターネットについては、もはや「空間距離認知が 不能」になるともいえよう。その分、おそらく「距離認知以外 の別の機能」が勢力を増していき、我々の生理機構に新たな適 応を迫ることになるのだろう。



Yoshio Nakamura
Mon Dec 27 10:02:29 JST 1999