そのような「身体の拡張」において重要な役割を果たす のが「手指感覚の強調」である。じっさい、コンピュータ画面 上の矢印と手元のマウスとの関係は、現時点でもかなりの程度 に一体化していて、マウスのボールの転がり具合が悪いと不具 者になったようないらだちを感じることも多い。そのようない らだちは、「クリック」に対して画面表示が遅いときにも感じ る。そこではあたかも、遠くのどこかのサーバーから流れてく る情報パケットの連なりが自分の神経内部に到達しているかの ような錯覚さえ与える。そのとき、マウスを保持している手指 は、「情報流の速度と画面表示」に敏感になっていくのである。
もちろん、インターネットもテレビと同様に人を座らせ る。したがって、臀部の感覚は椅子や床に吸収されてしまうこ ととなる。このように、我々が「体性感覚神経」と読んでいる 感覚比率の調節が、インターネットのへ適応の結果として生起 する。
インターネットの時代には、お尻はますます重くなり、手指は ますます繊細になるのである。