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魅力と警戒心

さて、話を元に戻すと、このアンケート調査の大きな目的は、 私が電子メールに費やす時間が標準と比べてどの程度大きいの かということを確かめるところにあった。この一カ月間の私の メール使用時間を記録したところ、一日平均73分であり、これ は60名の回答者の最高に近い数値であった。しかし、使用歴や 送受信件数の多いグループに限れば、それほど特異な値ではな かった。ある意味では、「普通」の範囲内にあるとも言えよう。

それでは、現時点で使用歴の浅い人々も、今後5年、10年と年 を経るにしたがって、今の私と同じように「電子メール所要時 間」が増大していくのであろうか?今回の調査結果を見る限り、 それは「必然」とはいえない。というのは、メール使用年数と 所要時間との間の相関は弱く、使用歴が長くなっても交信件数 がさほど多くない人々もいるからである。「積極的に利用する 人」と「なるべく使わないように心がける人」がいたとしたら、 送受信件数ならびに所要時間には大きな開きが生じることが予 想される。おそらくそれが、この「弱い相関」の意味するとこ ろなのであろう。

今回の調査を集計しながら「自由意見」なども含めて一人一人 の使用状況を想像してみると、やはり、a)「まだあまり使い込 んでいない人」、b)「使ってはいるもののその使用を抑制する ように意識している人」とc)「メールによる研究の推進に積極 的な人」とに分類できるのではないか」ということを感じた。 一般に、使用歴が浅いうちは、通信相手も交信量も少なく、メー ルに費やす時間も少ない。この段階が(a)のグループである。 しかし、交信相手が増えてきた次の段階で送受信件数の増加を 積極的に受け入れる人と、抑制する人がいる。後者が(b)のグ ループで、前者が(c)ということになる。gif

前節で述べたように、送受信件数が増えてくると必然的にメー ルに費やす時間が増大する。時間は無尽蔵にあるわけではない から、メールを処理する時間が増えた分だけ何か他の時間が削 られることとなる。もちろん、多くの場合メールの送受は研究 の一環であるから「研究時間」が削られるというわけではない にしても、少なくとも論文を読んだり実験をしたりといった古 典的な研究に費やす時間に影響を与えることは間違いない。お そらくはその「古典的」な方法論と「インターネット的」な方 法論との好みの違いが、(b)に進むか(c)に進むかの分岐要因な のではないかと想像できる。

私は、「質問紙」という方法論に未熟なためコンピュータある いはインターネットに関しての「意識」と「行動」との関連を 掘り起こすことはできなかったが、少なくとも、現時点では 「電子メールの使用を奨励すること」を期待している人がいる 反面、「電子メールに警戒心を抱いている人」もいるというこ とは感じられた。「インターネット時代の研究生活」を模索す る上で、単なる「望ましい(平均的な)姿」を提示するだけで はなく、その「姿」に及ぼす「研究者の意識」の影響を評価す ることも重要なのではなかろうか、というのが今回の調査の結 論のようだ。

やれやれ、この連載も、思ったほど簡単ではなさそうである。

今回の原稿執筆に際して、電子メールでの調査にご協力くだ さった皆様に深く感謝いたします。また、同種の調査を今後 とも継続していくつもりですが、それにご協力いただける方 を公募いたします。ご協力いただける方は、是非 [email protected]までご 連絡ください。Subject: に「Internet」とだけお書きくださ るだけで結構です。


Yoshio Nakamura
Mon Dec 27 10:02:29 JST 1999