このアンケートについて最初にいわなければならないことは、 回答率の低さである。前回のアンケートは突然のことでしかも まだ面識のない人も含まれていたため、74%という回答率は順 当なものだと感じたが、今回は、前回回答してもらった人々に 限って送付したにも関わらず、その回答率は前回よりも低かっ たのである。
回答率が低かった最大の理由は、設問の不備すなわち「設問が 答えにくいものだった」ということであろう。電子メールと違っ て、「文献検索」を日常のルーチンとして行っている人はほと んどなく、新たな構想を練っているときとか、論文執筆時など に集中して行うのが普通で、「一月あたり何回」などと平均化 できるものではないし、「取得する文献」「文献を読む時間」 という設問も、容易に推計できるものではない。実際、回答の 付記に「答えにくいもので、返送すべき回答ではないかもしれ ない」とか、「中村でなければ回答しなかった」といった(極 めて好意的な)示唆が寄せられたし、後日回答数値の訂正が依 頼されたこともあった。また、自然科学系でない研究者にとっ て、「文献検索」自体が必要事項でなく、この設問が無意味だっ たということも理由の一つであろう。そのような分野の方の多 くからは回答されなかったのだが、そんな中無理に回答してく ださったある方は、「0」という回答に際して「勉強不足で恥 ずかしい」という意見を付記し、あたかもインターネットによ る文献検索をしないことが恥ずべきことであるかのよう感じて いるようだった。
つまり、いきなり「電子データベース以外の…検索をしたこと があるか」などと、あたかも「インターネットを通じた文献検 索」をだれもが行う当然のことのように質問していること自体 が、このアンケートの意味をさらに偏ったものにし、「回答不 能」な状況を作り出したのだといえる。おそらく、非回答の20 名のうち、5〜10名はこのような回答不能者だったと見積もら れ、今から思えば、「文献検索をしたことがあるか?」、「電 子データベースを利用したことがあるか?」という2つの設問 を冒頭に追加していれば、回答率はもう少し高くなっていたの ではないかと推測される。
また、無理矢理の数値化を強制した回答であったため、回答さ れた数値自体の信頼性も高くはない。でも、「信頼できる調査」 をする事自体が不可能だし、設問の不備を今さらあらためるこ とができないので、あくまでも「寄せられた回答に基づく私の 感想」として、低い回答率やその回答結果を私なりの文脈で解 釈させてもらった。