ついでながら、LaTeXの便宜の一つに「科研費マクロ」がある。 すでに(6月号に)記したことであるが、毎年9月末頃になる と、LaTeXによる科研費申請書作成のためのマクロファイルが (一部の篤志家によって)作成され、それがインターネット上 に公開される。
このファイルをそのままLaTeXでコンパイルしてA4紙に印刷す ると、その年の「科研費申請書」が出力される。つまり、その 「制作グループ」は、文部省から毎年販売される各種申請書を 入手し、それが(注意書きまで含めて)そっくりそのまま出力 されるような「文書ファイル」を作成してくれるのである。と いっても、普通のワープロの上で罫線枠組みを作ってそこに文 字を入れるというようなものではない。LaTeXの主要な思想は、 「文書の体裁を気遣うことなく、その内容および構造に集中で きる」というところにあるわけで、「位置合わせ」をするので は意味がない。個別の申請者が行うことは、当該種目の「マク ロファイル」の中に独自の「項目」を記入することなのである。 つまり、そのマクロファイルを手にした私は、項目としての研 究題目、氏名、所属、学歴などに加えて、費目毎経費を年度毎 に記し、あとは、目的、方法、…、業績というようにそれぞれ の項目を記せばよい。重要なのはあくまでもその「中身」であ り、「位置合わせ」や「数字あわせ」ではないのだ。「自分は こういう研究をこういう予定で行いたい。それにはこのくらい のお金がかかる。」ということを訥々と記していくと、いつの まにか科研費申請書ができあがるというわけである。
これは、本当に便利だ。思えば、これまで申請の度に、計画文 書を作成し、それが枠に収まるかどうかを印刷して確認し、普 通の紙に印刷したものを切り取って、題目、氏名、所属、学歴 などの細かい紙片とともに申請書に張り付け、両面コピーして 糊付けした後にマジックで横棒を書く、という面倒な作業をやっ ていたものだった。業績欄に同じ文献を記しているのに、昨年 のファイルのリストがそのまま使えないばかりか、異なる申請 書式に当てはめるために別々にリストを作成しなければならな いことも多かった。そんな単なる「事務的な整形」のために、 まるまる1日費やすこともあった。そんな労苦のほとんどがも はや不要になったのである。
このマクロファイルは、
ftp.yukawa.kyoto-u.ac.jp
http://www.yukawa.kyoto-u.ac.jp/htbin/kakenhi.pl
から入手することができる。しかし、「季節もの」であり、最 新の「旬」の情報を得るためには、科研費マクロのメーリング リストに登録した方がよいだろう。
宛に「subscribe」とだけ書いたメールを送ることで、9月末 から11月はじめにかけて、関連するメールが頻繁に送られてく る。でも、もちろん、LaTeXを使えなければすべての情報は無 意味である。