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公開と著作権

さて、前節の私の問題提起とそれに対する編集者側の回答を取 りまとめるにあたって、編集部のI氏はとても困惑していたよ うだ。もちろん、「こんな面倒くさいこと言わないで書いてく れればよいのに」という言葉はおくびにも出さずに、「難しい問題だ けど、出版社としても考えなければならないんです」とか、 「正直言って、著作権についてはおっしゃるとおりで、版面の 著作権だってデザイナーに帰したら、じつのところ出版社には 何も残らなくなっちゃう場合もあります」gifと弁明していた。つまり、こと「著作権」につ いていえば全て著者に帰属するもので、出版社はその権利を 「使用」しているだけなのだ。だから、掲載後の文書を他 に転用するのは著者の勝手なのである。それを、(たとえ原稿 料を支払ったといったって)出版社が「転用不許可」にするこ とはできないのだ。

しかし、私のこの論理は、一般常識からは逸脱している。つま り、上記の論理にはどこかに欠陥があるのだ。主要な欠陥は、 これが、「著作権」だけを強調した一方的な論理だということ だ。というのは、著者に「著作権」があるように、出版社には 「編集権」gifがある。だから、掲載する前の段階では、出版 社がその掲載の可否について絶対的な権限を有しているわけだ。 もちろん、一度掲載されてしまえば、(学会誌などで著作権の 委譲をしていない限りは)その転用は著者の思いのままである。 しかしながら、そのような前歴を作った著者は、出版社(編集 者)のブラックリストに載るかもしれないし、この連載につい て私がみだらに転用したりすれば、途中で連載が打ち切られて しまうかもしれないのだ。つまり、私が「著作権」だけを盾に 「wwwからの転載」を要望するのは一方的なのであり、編集委 員会および杏林書院にこの雑誌の「編集権」があって、「他誌 からの転載は行わない」という原則があれば、私の「要望」な ど一蹴して当然なのである。

つまり、結局のところ、申し訳なさそうに出版社と編集委員会 の「意向」を伝える杏林書院のI氏に対して、私は、「これを 断るのは、出版社に編集権がある以上当たり前のことです」と 慰めたのだった。



Yoshio Nakamura
Mon Dec 27 10:02:29 JST 1999