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メディアの身体

ところで、前二章(6,7月号)で述べてきた「身体の拡張」 という概念は、30年以上も前にマクルーハンが提起し理論化し ているものである。その著書gifの冒頭には次のような記述が ある。

機械の時代に、我々はその身体を空間に拡張していた。現在、 一世紀以上にわたる電気技術を経たあと、われわれはその中 枢神経組織自体を地球規模で拡張してしまっていて、わが地 球にかんするかぎり、空間も時間もなくなってしまった。急 速に、われわれは人間拡張の最終相に近づく。それは人間意 識の技術的なシミュレーションであって、そうなると、認識 という創造的なプロセスも集合的、集団的に人間社会全体に 拡張される。さまざまのメディアによって、ほぼ、われわれ の感覚と神経とをすでに拡張してしまっているとおりである。

この書が著されたのは、ちょうどIBM360gifが発表された年であり、IBM-PCgifが発売された のは著者の死後のことである。したがって、この「メディア論」 にとって「インターネット」は外挿事項gifといえる。にもかか わらず、この文章は、あたかも「インターネット時代」の身体 観、社会観に関する言明であるかのようにも思える。おそらく、 マクルーハンの提示する理論(メディア論)は、来るべき世紀 の身体観を予想する上で重要な示唆を与えれくれることであろ う。

そこで、今回は、マクルーハンの「メディア論」をおさらいし て、来るべき世紀のメディアと身体の変容について考えてみた いと思う。





Yoshio Nakamura
Mon Dec 27 10:02:29 JST 1999